佛立研究所(所長・植田日事師)による公開講演会が、去る5月23日、名古屋佛立寺(住職・面家日瑩師)を会場に開催された。公開講演会は今回で30回目となるが、広く一人でも多くの方に聞いていただこうと、宗務本庁外での開催となって4回目である。当日は第三支庁長・妙典寺住職・奥山日典師、管内寺院の御住職また修学塾の協力もいただき教務師方も多数参加され、寺内外のご信者、宗外の方も含め約250名が聴講され会場は埋め尽くされた。
今回の講演会講師は、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授・安保徹先生をお招きして講演をいただいた。先生は、昭和22年(1947)青森県生まれ、東北大学医学部卒業。アメリカ・アラバマ大学留学中の昭和55年(1980)、「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクロナール抗体「Ler-7」を作製。昭和64年(平成元年、1989)、胸腺外分化T細胞の存在を発見。平成8年(1996)、白血球の自律神経支配のメカニズムを世界で初めて解明。平成11年(1999)、世界の「マラリア感染学」の常識を塗り替える発見を発表。平成12年(2000)、世界中で約百年にわたって胃潰瘍の原因が胃酸であるとの定説を覆して注目される。二百を超える英文論文を発表し、国際的にも活動。専門は国際感染医学、免疫学、医動物学分野であられるが、人はどうすれば健康になれるか、という医学上の問題を解き明かされると同時に、人はどうすれば幸せになれるのか、生き方が変わらないとがんは治らない、という医学見地から人生観も語られる。
世間では新型インフルエンザの感染が拡大するなか、当日は「健康と免疫」と題して先生が積年研究されてきた一端を講演いただいた。
私たち人間は約38億年かけて進化しさまざまな能力が備わっているが、能力の限界を超える過酷な環境や状況、生き方を選んだときに病気にりやすく、病気になった一人ひとりが“生き方”を見直さないと病気からは脱却できない、と終始一貫して生き方の見直しを語られた。特に慢性疾患や難病に罹るのは、必ず今までの生き方に因果関係があるのだから、小手先の治療ではなく、原因をよく追って悪いところを根本的に正していかないと、結局完治しないと明言される。今回の講演では、人の“生き方”の改善がより自分をよくしていくこと、そして、単に肉体の病気・健康という医学の枠だけではなく、人間の幸不幸は生き方に因果関係があることを、普段信心第一に悦び勇んでご奉公させていただく日常信行の優位性を再確認することができたのではないだろうか。
佛立の場の実践を通じて、佛立宗的人生観の優位性を再認識することができたのではないか。
また、人の病(苦しみ)を取り除くための、悪に対する根深い原因の追求ということからも、私たちの日常の信心生活に対し、いかに普段から凡夫の罪障感をもって、謙虚に信心修行の功徳を積ませていただく大切さを感じることができた。肉体と精神の双方を見直し、“生き方のバランス”を保つことが、日々健康でご信心ご奉公をさせていただくためのヒントと学ばせていただいた。質疑応答の後、最後に第三支庁長・妙典寺住職・奥山日典師より挨拶、研究所副所長・河内良説師の閉会の辞をもって講演会は無事終了。参加者の多くがロビーに設けられた購買所で安保先生の著書を購入し、その場で直筆のサインを受けながら散会となった。
第30回「健康と免疫」H21.5.23
阿 保 徹 先生 新潟大学大学院医歯学總合研究科教授
第29回「笑いを科学する」-笑い測定機の冒険-H20.11.15
木 村 洋 二 先生 関西大学社会学部教授
第28回「こころのことば」H19.9.29
第27回「子どもを変えるお父さんお母さんの底ぢから」H19.5.10
長 田 百合子 先生 (有)塾教育学院メンタルケア部門代表
第26回「高齢者に寄り添う介護のポイント」H18.11.28
袖 山 卓 也 先生 (有)笑う介護士 代表取締役
第25回「日蓮聖人ご図顕の大曼荼羅について」H17.11.16
片 岡 邦 雄 先生 宗教法人立正安国会首導
第24回「科学者・教育者にとっての佛立信仰」H16.12.15
伊 藤 精 彦 先生 苫小牧工業高等専門学校校長
北海道大学名誉教授
第23回「高祖日蓮大士の出自について」H16.2.10
塚 田
第22回「少子・高齢化とこれからの佛立宗」H15.6.18
川野辺
第21回「現代社会における家族の問題と
これからの家族のあり方」 H14.11.14
村 尾 泰 弘
第20回「佛立宗から見た異文化・異文化から見た佛立宗」H13.11.7
江 嶋 修 作 先生 解放社会学研究所所長
第19回「思春期の心の問題について」H12.11.10
田 代 謙一郞
第18回「自己啓発セミナーとは何だ」H11.11.11
弓 山 達 也
第17回「子どもの叫びの声聞こえますか」 H11.2.19
本 田 利 子
第16回「外国人の見た日本と宗教」 H10.10.16
バーナード・ファーレル 先生
第15回「これからの家族のゆくえ」H10.2.9
家族社会学
第14回「心を病む人々を支えるため」H9.10.16
第13回「死をみつめると生がみえてくる」H9.2.18
カール・ベッカー 先生 京都大学総合人間学部助教授
第12回「信仰伝達の諸問題点」H8.10.16
第11回「宗教的活動目的の各種資金獲得活動に関する
実態と問題点」H8.2.22
山 口 広
第10回「民族の共存共栄」H7.11.21
比 嘉
第9回「仏の世界観」H6.11.11
西 村 公 朝
第8回「御講について」H6.7.4
江 嶋 修 作 先生 解放社会学研究所所長
第7回「現代の宗教情況と人々のニーズ」H5.11.9
対 馬 路 人
第6回「教団マーケッティングの基本」H5.10.14
石 井 淳 藏
第5回「宗学的研究と仏教学的研究」H5.7.14
指 田 日 乗
第4回「ひとつの弘通学概論 如説修行抄」H5.4.20
第3回「死の教育について」H5.2.18
蔵 本 博 史 先生 山梨医科大学
第2回「マーケッティングの手法について」H4.12.16
石 井 淳 藏 先生 神戸大学経営学部教授
第1回「経営的観点から見た佛立宗」H4.8.26
友 近 忠 至
㈱シエスタ代表取締役会長
第28回公開講演会が、平成19年9月28日、東京・乗泉寺(住職・川口日智師)を会場に開催された。
今回の講演会の講師は、お茶の水女子大学名誉教授外山滋比古先生をお招きし「こころのことば」と題して講演をいただいた。先生は専門の英文学のほか、言語学、修辞学、さらには教育論など広範な研究と評論を続けられる一方、ことばによる幼児・子供の情操教育・知育の大切さを長年説いてこられた方である。
当日も、人間の心を育むのは言葉である。「三つ子の魂百まで」と言われるように、赤ん坊のうちからお母さんが、繰り返し繰り返し言葉をかけ続け子供の『絶対語感』を養うことが大切で、その言葉の習慣が第二の天性となって精神・心が培われるのだから、美しい言葉・良い言葉を使うことが大事だと話された。そして今は、多くの人が信仰というものを忘れてしまっているが、年を取って若い人達から、ああいう美しい心の老人になりたいねと言われるようになるためには努力が必要で、信仰、信心をするということは大変、人間的な価値のある経験である。どうか豊かな心を育む豊かな言葉を使っていただきたい、と結ばれた。
当日の参加者一同も改めてご信心の大切さを再認識し、また、小さいときから繰り返し教え続けるという法灯相続とも相通じるお話しを真剣に聴講していた。外山先生には、この後の質問にも丁寧にお答えいただき、あっという間の1時間半の講演であった。
平成18年11月28日に「第26回公開講演会」を開催した。当日は「笑う介護士」として有名な袖山卓也氏を講師にお招きして『高齢者に寄り添う介護のポイント』と題して講演いただいた。
袖山氏は「福祉に資格なんて必要ない」との理念で、自身が施設長を務めるセンターでは、ほとんど無資格・未経験の職員を集め、そのサービスは、現在多くの注目を集めている。そして、テレビや雑誌等の各メディアにも大きく取り上げられ、紹介をされている。さらには執筆活動にも力を入れ、本の出版もしておられる。また、多くの人材を育成するかたわら、老人ホームの経営の再建や、現場指導もしておられ、自分にとって「介護は天職です」と語り、寸暇を惜しんで活動をされている。
特に今回の講演で印象づけられたのが「介護にとって大事なのは、自分は人であって、相手も人です。同じ人間同士、心があれば必ず心に伝わる。普段から人を見ること。例え認知症の方であっても、一人一人違うのだから、その人の生活スタイルに合わせるのです。介護は、する人の思いや感情は必ず相手に伝わるのだから、誠意を持って接し続けることが大切」さらには「介護ということを見つめる時、自然なお手伝いをする中で、笑いがある。相手の気持ちをどう理解するかが、大事なのです。」とお話しいただいた。
私ども宗門寺院においても、急激に進む高齢化社会から、目を背けることは決して出来ない。一つの時代を築き、寺院発展のために尽くされた高齢のご信者への配慮・対応など、大いに考えさせられるお話であった。
それとともに、高齢者へのアプローチの仕方は「御議席」「お助行」「教化・下種結縁」等の場面においても、大変参考となる公開講演であった。
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