所長・向井日報師が大放光の『新役中入門』(平成141月~2012月)に連載した原稿に少し手を加え、佛立教養の向上を目的として月一回更新していきます。

まず「信心を根とする“公正さ”」を大切に

○はじめに
「大放光」編集責任の方から「今の役中さん向けのものを何か書いてほしい」とのご依頼を受けたのは、平成13年11月も下旬のことでした。以前にも同様のお話があり、その折りは「とても、とても」ということで固辞させていただいたのですが、今回は丁度清風寺で2年間にわたる寺内の「組長研修会」の1年目が終わったところで、「その研修会の内容をもとにしたものでいいから」とのこと。もとより浅学非才、信心も至って未熟であることは自身でもよく承知しており、とてもお役中に対する体系的な講義などさせていただくことのできるような器ではございません。実際、先述の第1年度の7回にわたる「組長研修会」も私が直接担当し講話をさせていただいたのは3回にすぎず、他の4回は他のお教務方にお願いしたほどです。

本誌上での「講話」は今回が初回ですので、まずは「組長研修会」の経緯と概要を略述いたしておきたいと存じます。そもそも清風寺には従来「教育部」という部署は無く、弘通部や教養部が分担して、お役中や、教養各会の研修会や教養会を開催してまいりました。ずっと以前には教務会が担当して『宗徒教範』(本庁刊)等をテキストとする研修会も実施されていた時期もあったのですが、近年はそれは行われず、寺内に「研修委員会」が組織され、そこが中心となって、幹部、教区長、教区役中等を対象とする研修会を、場合によって連合別や教区別に、寝屋川にある「回向堂研修センター」において、1泊2日等で実施してきたのです。講師は寺外・寺内の教講に依頼しておりました。しかし、こうした形態は研修委員会にも負担が大きく、また教養各会ごとの独自の研修も、相互の連けいという点で問題がある、ということで、やはり「寺内全体の教育を統括する部署が必要」という声が、特にご信者の中から大きくなり、先年の寺制改正にあたって新たに「教育部」が創設されたのです。

この部の部長はご信者で、教務会の教学部の執事が参与となっており、過去に幹部、教区長等を対象とする研修会を既に実施しました。昨年の「組長研究会」もご信者の声を大切にしつつ研修内容を策定し、まず寺内の各種の書類の使用法や具体的記入法などを分かり易くまとめた『書式便覧』を刊行した他、これも受講者の要望に基づいて『お助行・回向差定言上文』(組長用)も刊行・配布させていただくことができました。これは「お助行」「逮夜回向」「臨終のお看経」「納棺」「収拾舎利」などの差定・言上文が『妙講一座』を見なくても、その一冊で当該の箇所を頁を逐(お)って拝読・言上ができるようになっているものです。この二種の冊子は、幸い多くの組長さんに喜んでいただいております。 「組長研修会」のテーマは左の通り。

  • ①4月「参詣について」
  • ②5月「祈願について」
  • ③6月「お葬式」Ⅰ・・・帰寂から葬儀
  • ④7月「お葬式」Ⅱ・・・逮夜回向から納骨
  • ⑤9月「お役の勧(すす)め方」
  • ⑥10月「御講席・お助行について」
  • ⑦11月「まとめ」Ⅰ

なお研修会は原則として毎月17日(平日)とし、午後7時から8時半までの1時間半。場所は清風寺の大講堂で、ありがたいことに毎回二百数十名の組長さん等が加行していただきました。

毎回資料を配布し、それを綴(と)じてゆく専用のファイルも支給、1年でファイルはほぼ満杯になりました。

○初心者の組長さんを念頭に置いて
 研修にあたっては、まだお役に不慣れな組長さんを念頭に置き、できるだけ具体的・実践的であることに努めました。途中で質問も受けましたし、アンケートもいたしました。そうした中で改めて分かったことの一つに、結構ベテランの組長さんでも「初めて意味が分かりました」などということが随分あったことです。

前置きが長くなってしまいましたが、以上のような「組長研修会」のご奉公経験をもととしつつ、この誌上講話を及ばずながら執筆させていただきたいと存じますので、どうか宜しくお願いいたします。

○信心を根とする“公正さ”を大切に
 さて、私が開講にあたって、組長・お役中に対し、最初にお話ししたのは、お役中の心得として、まず「公正さ」ということを大切にしてほしいということです。

例えば「組長」(部長)さんは、佛立宗の組織の基本である「組」(部)を預かる責任者です。御宝前から頂戴し、御住職から委嘱された「役」であることはもちろん忘れてはなりませんが、組内のご信者からみれば、何といっても自分の所属する組の代表者であり、指導者であり、責任者であるわけです。ですから組長たる者、自ら信心前を高め、率先垂範に努めることはもちろん、慈悲の心を根とした厳しさとやさしさの両面を兼ね備える努力が大切ですが、もう一つ特に大切にしていただきたいのが「公正である」ということです。組の代表者であり、責任者であるわけですから、組長の指示や言葉は組内のご信者からそれなりに大切にされます。しかし、それだけに、いやそれだからこそ、本当に重んじられ、一定の権威が認められるようになるには、やはりまず「公正さ」が大切だと思うのです。

例えば組内のご信者間で何か問題が生じた時など、組長は双方の意見や言い分をよく聞き、実際の情況をできる限り客観的に把握した上で、必要なら責任の御講師やご住職とも連絡を密にしつつ、公正な態度で対応し、偏(かたよ)りのない判断をすることが大切なのです。そこでは組長の私的な「我(が)」や好悪の感情を極力抑え、根っこのところに信心を置き、御宝前に向かわせていただく心が大切になります。それがご信心に即しつつ、組内に正しい秩序の維持を実現させていただくために不可欠な心得だと存じます。

譬(たと)えが少し大袈裟かもしれませんが、一つの国、あるいは社会など、あらゆる人間の組織や集団にとってまず第一に求められるのはその組織の「秩序の維持」ということです。その為に「法」や「ルール」があるわけです。もしその「法」が偏ぱで不公平なものであったり、組織の指導者が「法」を破って不正なことをしたりすれば、その組織の秩序は到底維持できるものではありません。「法の目的」は「秩序の維持」であり、そのために大切なのは①「法的安定性」と②「具体的妥当性(正義)」であるとされます。少し専門的な言葉ですから、分かり易く説明しますと、①の「法的安定性」というのは、基本的なルールがちゃんと理解され、受け入れられており、コロコロ変わったりせず支持されていることであり、②の「具体的妥当性」というのは、実際的な個々の事例・場面で、誰もが納得できる正しさがあり、平等公平だということです。

右の①も②も「当たりまえ」といえばその通りですが現実の社会では中々理想通りにはゆかないことはご承知の通りです。国際社会で不平等や不公正が高じれば国家間や民族間での戦争やテロが起こりますし、一つの社会・組織内でこれが高じれば治安が悪化し、ついには収拾のつかない混乱になります。

裁判などでよく争われるように、実際には一つの事件や物事でも、見方や観点、立場等によってその見え方も全く違ってくることが多いものです。だからこそ、一つの事件にしても、当事者双方の見解をよく聞き、事実をできる限り客観的に認識するように努力し、可能な限り真実を明らかにした上で、公正な判断、多くの人がなるほどと納得できる判断を下すことが大切になるわけです。

こんなことを言うと、お役中は「これは大変だ。そんな判断や対応など、自分にはとてもできない」としりごみする方もあるかもしれませんが、何も裁判官になるわけではありませんから、そんなに大層に考える必要はありません。ただ、大事な心得として「できる限り公正、公平に」という気持ちを大切にしてもらいたいのです。組内に問題が生じた際、少なくとも、よく調べもせず、確かめもせずに一方的な判断をしないように努め、穏やかに対応する。また、先輩役中さんに前例がどうなっているか、その時の対処がどういうもので、それがどのように受け入れられたか(あるいは受け入れられなかったか)、などを参考にする姿勢も大切です。なお、役務ご奉公全般において、各ご信者の個人的なプライバシーを大切にし、尊重することも、ご信者の信頼を得、いざというとき本当に腹をわって話をしてもらえるかどうかに大きく影響します。

お役中も凡夫ですから、至らぬ所もあれば失敗もあります。しかし、真面目な気持ちで御宝前におすがりし、できる限り公正に、と努力する姿勢さえあれば、きっと組内のご信者も次第に信頼を寄せ、助け、協力してくれるようになるものなのです。

 

4月の御講席でご供養をいただきながら雑談をしていると、92歳になる坂本さんが「今年もヘチマを植えました」とのこと。今年はヘチマの苗が中々見つからず、庄内中の植木屋さんを自転車で回ったがないので、三国まで買いに行ったとのこと。組内で最高齢の坂本さん、そのフットワークの軽さに一同「へーっ」と唖然。毎年、ご自宅の庭で植えられ秋にヘチマ水を取っては化粧水にして組内のご信者にお裾分け。「ヘチマの実は中国人や沖縄の人は好んで食べられるし、もちろんタワシにもなる。実を収穫して秋口にツルからヘチマ水をとれば1本のツルから一升瓶で7~8本はとれますよ。これを生成すると咳止めの薬にもなるし、アルコールを加えると化粧水にもなるのですよ。市販のものはほんの僅かしかヘチマ水が入っていませんが家庭で作ると純度が高く良い化粧水になるのですよ」と坂本さん。とても92歳には見えない坂本さんの肌つやを見て、一同、納得。

つづきを読む

 

12月16日(水)第40回佛立研究所・研究員会議が開催され、弘通研究部門から大阪・清風寺、西村清良師から小発表があり、テーマは『佛立青少年アンケート』から見える青少年に対してご信心の影響を与えた人と、その人の印象に残った言葉の集計と解析が発表された。

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8月20日(木)第37回佛立研究所・研究員会議が開催され、小発表を教学研究部門から、兵庫・妙宝寺、野口清継師の小sa3a0098.jpg発表があり、「高祖当時の武家信者における主君の立場の一考察」というテーマのもと発表がありました。
また、去る7月7日、(財)全国青少年教化協議会主催による「協働コーディネーター養成講座」~お寺と地域をつなぐコーディネート力を磨く~と題した参加体験型の講演会に参加した、和歌山・妙経寺、吉川廣京師と大阪・清風寺、西村清良師より参加報告がありました。sa3a0101.jpg

 

7月15日(水)第36回佛立研究所・研究員会議が開催され、小発表を教学研究部門、弘通研究学部門よりそれぞれ、東sa3a0062-5-syou2.jpg京・立正寺、小川立恵師、神奈川・妙深寺、長松清潤師の二師から小発表があり、それぞれ「「第二世講有日聞上人のご事跡をお偲びして」~鶴松堂日記を中心に~、「佛立co-op 佛立的ライフスタイルをもっと社会へ」~信で結ばれた社会活動~、というテーマのもと発表がありました。sa3a0066.jpg
 

 

sa3a0044.jpg月24日(水)第35回佛立研究所・研究員会議が開催され、小発表を教学研究部門から、弘通研究学部門より、大阪・清風寺、西村清良師、また熊本・長薫寺、高須昭因師の二師から小発表があり、テーマは西村師より『ペット霊園sa3a0047.jpg・納骨堂』というタイトルで、                                                          宗内外における現在のペットの納骨・回向事情と今後の課題と問題点を、高須師からは『「口唱とお看経」につて』というタイトルでお看経の語義とその変遷、定義に対する再認識と実践のあり方について発表がありました。  

 

~健康でご信心をさせていただくヒントにもつながる~  

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佛立研究所(所長・植田日事師)による公開講演会が、去る523日、名古屋佛立寺(住職・面家日瑩師)を会場に開催された。公開講演会は今回で30回目となるが、広く一人でも多くの方に聞いていただこうと、宗務本庁外での開催となって4回目である。当日は第支庁長・妙典寺住職・奥山日典師、管内寺院の御住職また修学塾の協力もいただき教務師方も多数参加され、寺内外のご信者、宗外の方も含め約250名が聴講され会場は埋め尽くされた。

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今回の講演会講師は、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授・安保徹先生をお招きして講演をいただいた。先生は、昭和22(1947)青森県生まれ、東北大学医学部卒業。アメリカ・アラバマ大学留学中の昭和55(1980)、「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクロナール抗体「Ler-7」を作製。昭和64(平成元年、1989)、胸腺外分化T細胞の存在を発見。平成8(1996)、白血球の自律神経支配のメカニズムを世界で初めて解明。平成11(1999)、世界の「マラリア感染学」の常識を塗り替える発見を発表。平成12(2000)、世界中で約百年にわたって胃潰瘍の原因が胃酸であるとの定説を覆して注目される。二百を超える英文論文を発表し、国際的にも活動。専門は国際感染医学、免疫学、医動物学分野であられるが、人はどうすれば健康になれるか、という医学上の問題を解き明かされると同時に、人はどうすれば幸せになれるのか、生き方が変わらないとがんは治らない、という医学見地から人生観も語られる。  

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世間では新型インフルエンザの感染が拡大するなか、当日は「健康と免疫」と題して先生が積年研究されてきた一端を講演いただいた。

 私たち人間は約38億年かけて進化しさまざまな能力が備わっているが、能力の限界を超える過酷な環境や状況、生き方を選んだときに病気にりやすく、病気になった一人ひとりが“生き方”を見直さないと病気からは脱却できない、と終始一貫して生き方の見直しを語られた。特に慢性疾患や難病に罹るのは、必ず今までの生き方に因果関係があるのだから、小手先の治療ではなく、原因をよく追って悪いところを根本的に正していかないと、結局完治しないと明言される。今回の講演では、人の“生き方”の改善がより自分をよくしていくこと、そして、単に肉体の病気・健康という医学の枠だけではなく、人間の幸不幸は生き方に因果関係があることを、普段信心第一に悦び勇んでご奉公させていただく日常信行の優位性を再確認することができたのではないだろうか。

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 佛立の場の実践を通じて、佛立宗的人生観の優位性を再認識することができたのではないか。

また、人の病(苦しみ)を取り除くための、悪に対する根深い原因の追求ということからも、私たちの日常の信心生活に対し、いかに普段から凡夫の罪障感をもって、謙虚に信心修行の功徳を積ませていただく大切さを感じることができた。肉体と精神の双方を見直し、“生き方のバランス”を保つことが、日々健康でご信心ご奉公をさせていただくためのヒントと学ばせていただいた。質疑応答の後、最後に第三支庁長・妙典寺住職・奥山日典師より挨拶、研究所副所長・河内良説師の閉会の辞をもって講演会は無事終了。参加者の多くがロビーに設けられた購買所で安保先生の著書を購入し、その場で直筆のサインを受けながら散会となった。

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090514_113903.jpg月14日(木)第34回佛立研究所・研究員会議が開催され、小発表を教学研究部門から、大阪・安国寺、宮武昇立師、また弘通研究部門より、和歌山・一乗寺、河内良説師の二師から小発表があり、テーマは宮武090514_135501.jpg師より「陽に説く御法門について」というタイトルで、河内師からは「教弥実位弥下の下種の法」というタイトルで発表がありました。  

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